最初に押さえるポイント

  • 日本の総広告費は2020年に落ち込んだ後、2021年以降は回復し、2024年に7兆6,730億円で過去最高となった
  • 日本ではインターネット広告費が3兆6,517億円、構成比47.6%まで拡大し、広告費の中心がデジタルへ移っている
  • 世界の広告市場も成長が続き、dentsuは2024年の世界広告費を7,724億ドル規模と予測している
  • 広告費推移は市場全体の景気だけでなく、媒体配分、消費行動、動画化、データ活用、イベント需要を合わせて読む必要がある

日本と世界の広告費推移を見る意味

広告費の推移を見ると、企業がどの媒体に予算を投じ、生活者との接点がどこへ移っているかを把握できます。単に「広告市場が伸びた、縮んだ」と見るのではなく、テレビ、新聞、雑誌、ラジオ、インターネット、屋外、交通、イベントなどの構成比がどう変わったかを見ることが重要です。

特にマーケティング実務では、自社の広告費が市場全体の流れと合っているかを確認できます。市場全体ではデジタルや動画が伸びているのに、自社の予算配分が過去の媒体構成のままなら、顧客接点とのズレが起きているかもしれません。一方で、すべてをデジタルに寄せればよいわけではなく、商材、購買行動、地域性、検討期間によって最適な配分は変わります。

この記事では、電通「日本の広告費」とdentsuの世界広告費予測をもとに、日本と世界の広告費推移、媒体別の構造変化、実務での読み方を整理します。

広告費推移を見るときの3つの観点

市場規模だけでなく、構成比と成長要因まで分けて見ると実務に使いやすくなります。

観点 見る数字 分かること 実務での使い方
市場規模 総広告費、前年比 広告市場全体が拡大しているか、縮小しているか 広告投資を増やす環境か、効率重視に寄せる環境かを判断する
媒体別構成 インターネット、テレビ、新聞、OOHなどの構成比 生活者接点と企業予算がどこへ移っているか 予算配分、媒体選定、クリエイティブ制作の優先度を決める
成長要因 動画広告、リテールメディア、イベント、AI活用など 次に伸びる広告フォーマットや購買接点 新規施策、テスト予算、計測設計の候補を作る

この記事で見る広告費データの読み方

広告費推移は、市場規模、媒体構成、成長要因の3層で読むと判断材料にしやすくなります。

市場規模 総額・前年比

広告市場全体の拡大・縮小を確認する視点です。

媒体構成 媒体別構成比

広告費がどの接点へ移っているかを確認します。

成長要因 動画・AI・イベント

次に検証すべき広告フォーマットを見つけます。

日本の広告費推移:2024年は7兆6,730億円で過去最高

電通「2024年 日本の広告費」によると、日本の総広告費は2024年に7兆6,730億円、前年比104.9%となりました。2020年はコロナ禍の影響で6兆1,594億円まで落ち込みましたが、2021年以降は回復が続き、2024年は3年連続で過去最高を更新しています。

長期で見ると、2011年の5兆7,096億円から2024年の7兆6,730億円まで拡大しています。ただし、増え方は一直線ではありません。2019年に「物販系ECプラットフォーム広告費」と「イベント領域」が推定対象に加わったこと、2020年の急落、2021年以降の反動回復、インターネット広告費の継続成長を分けて読む必要があります。

つまり、日本の広告費推移は「景気回復で広告費が増えた」だけでは説明できません。EC、動画、SNS、コネクテッドTV、屋外・交通・イベントの回復など、生活者接点の変化が市場規模を押し上げています。

日本の総広告費の主な推移

電通「2024年 日本の広告費」の年次データを、節目となる年に絞って整理しています。

総広告費 前年比 読み方
2011年 5兆7,096億円 97.7% 東日本大震災後の影響もあり減少
2019年 6兆9,381億円 106.2% 推定対象の追加もあり大きく増加
2020年 6兆1,594億円 88.8% コロナ禍で広告市場が大きく落ち込む
2021年 6兆7,998億円 110.4% 反動回復とデジタル成長で二桁増
2024年 7兆6,730億円 104.9% 3年連続で過去最高を更新

日本の総広告費推移

単位は億円。2020年に落ち込んだ後、2021年以降は回復し、2024年に過去最高となりました。

2011 57,096億円
2014 61,522億円
2019 69,381億円
2020 61,594億円
2021 67,998億円
2022 71,021億円
2023 73,167億円
2024 76,730億円

日本の総広告費の前年比推移

2020年の落ち込みと2021年の反動回復、2024年の堅調な伸びを分けて見る必要があります。

2020年 88.8%

コロナ禍で大きく減少。

2021年 110.4%

反動回復とデジタル成長で二桁増。

2022年 104.4%

回復後も成長を継続。

2023年 103.0%

過去最高を更新。

2024年 104.9%

3年連続で過去最高。

日本の媒体別推移:インターネット広告費が47.6%まで拡大

2024年の日本の広告費を媒体別に見ると、インターネット広告費は3兆6,517億円、前年比109.6%で、総広告費に占める構成比は47.6%です。マスコミ四媒体広告費は2兆3,363億円、構成比30.4%、プロモーションメディア広告費は1兆6,850億円、構成比22.0%でした。

注目すべきは、インターネット広告費が伸びているだけでなく、マスコミ四媒体由来のデジタル広告費、テレビメディア関連動画広告、コネクテッドTV、SNS上の縦型動画など、従来媒体とデジタルの境界が曖昧になっていることです。広告費推移を読むときは「テレビ対デジタル」のように単純に分けるより、生活者がどの画面、どの場所、どの購買接点で接触しているかを見る必要があります。

また、プロモーションメディアも無視できません。2024年は屋外、交通、POP、イベント・展示・映像ほかが伸び、人流回復やインバウンド需要の高まりが広告市場を押し上げました。デジタル偏重ではなく、リアル接点とデジタル接点をどう組み合わせるかが実務上の論点になります。

日本の媒体別広告費(2022年〜2024年)

単位は億円。インターネット広告費の伸びが総広告費全体を押し上げています。

媒体区分 2022年 2023年 2024年 2024年構成比
総広告費 71,021 73,167 76,730 100.0%
マスコミ四媒体広告費 23,985 23,161 23,363 30.4%
インターネット広告費 30,912 33,330 36,517 47.6%
プロモーションメディア広告費 16,124 16,676 16,850 22.0%

2024年に伸びた主な領域

媒体名だけでなく、何が伸びたのかを見ると次の施策候補を作りやすくなります。

領域 2024年の動き 実務での示唆
インターネット広告 3兆6,517億円、前年比109.6% 検索、SNS、動画、リテールメディア、制作費まで含めて予算を設計する
テレビメディア関連動画広告 653億円、前年比147.4% テレビ由来コンテンツのデジタル配信も動画広告戦略に含める
交通広告 1,598億円、前年比108.5% 人流回復、駅・車内ビジョン、DOOHを認知施策に活用する
イベント・展示・映像ほか 催事、展示、体験接点が堅調 BtoBでは展示会、BtoCでは体験型施策とデジタル誘導を組み合わせる

日本の媒体別広告費構成比(2024年)

インターネット広告費が47.6%と、総広告費の約半分を占めています。

インターネット広告費 48%
マスコミ四媒体広告費 30%
プロモーションメディア広告費 22%

日本の媒体別広告費の伸び(2022年を100とした指数)

総広告費全体よりも、インターネット広告費の伸びが強く出ています。

総広告費 108.0

2022年の71,021億円から2024年の76,730億円へ増加。

マスコミ四媒体広告費 97.4

2022年比ではやや低い水準。

インターネット広告費 118.1

2022年比で約18%増。

プロモーションメディア広告費 104.5

人流回復やイベント需要が支えています。

2024年に伸びた主な広告領域

伸び率の高い領域を見ると、次に試す媒体やフォーマットの候補が見えます。

テレビメディア関連動画広告 147.4%

テレビ由来コンテンツのデジタル配信が拡大。

インターネット広告 109.6%

検索、SNS、動画、制作費を含めて成長。

交通広告 108.5%

人流回復と駅・車内ビジョンが支えています。

総広告費 104.9%

市場全体も堅調に拡大。

世界の広告費推移:2024年は7,724億ドル規模へ

dentsuのGlobal Ad Spend Forecasts 2025では、世界の広告市場は2024年に前年比6.8%成長し、7,724億ドル規模になると予測されています。2025年も5.9%成長が見込まれており、広告市場は世界経済の成長率を上回るペースで拡大する見通しです。

世界市場で成長を押し上げているのは、デジタル広告、スポーツイベントや政治イベント、米国・英国・ブラジル・フランスなど主要市場の見通し改善です。さらに、AIやデータを活用した広告配信、アルゴリズムによる配信最適化、リテールメディア、ペイドソーシャル、プログラマティック広告が成長領域として挙げられます。

世界と日本を比較すると、日本は世界第3位の広告市場とされ、成熟市場でありながらデジタル広告を中心に成長が続いています。世界市場ではデジタル比率がより高く、AI、コマース、ストリーミング、リテールメディアの影響がより強く出ています。

世界広告市場の主な予測

予測値は発表時点により更新されるため、最新レポートで確認することが重要です。

発表 対象年 市場規模・成長率 主なポイント
dentsu Global Ad Spend Forecasts 2025 2024年 7,724億ドル、前年比6.8% デジタル広告、スポーツ・政治イベント、主要市場の改善が寄与
dentsu Global Ad Spend Forecasts 2025 2025年 前年比5.9%成長予測 世界経済成長率を上回る広告市場成長を予測
電通グループ 2024〜2026年改定版 2026年 8,191億ドル規模を予測 デジタル広告比率は62.0%まで上昇する見通し

世界広告市場の成長予測

2024年以降も、世界広告市場は成長が続く見通しです。

2024年 7,724億ドル

前年比6.8%成長。

2025年 約8,180億ドル

前年比5.9%成長予測を2024年規模から概算。

2026年 8,191億ドル

電通グループ改定版の予測値。

世界広告市場を押し上げる主な領域

市場全体の成長要因を、次に検証すべき施策候補として整理します。

デジタル広告 成長の中心
リテールメディア 購買接点で拡大
ペイドソーシャル SNS接点で拡大
AI・自動最適化 配信効率を押し上げ

日本と世界の違い:共通点はデジタル化、違いは成長の内訳

日本と世界の広告費推移には、共通点と違いがあります。共通しているのは、デジタル広告が広告市場の成長を牽引していることです。日本ではインターネット広告費が総広告費の47.6%まで拡大し、世界でもデジタル広告比率は上昇を続けています。

一方で、成長の内訳は国や地域によって異なります。世界市場ではAIを活用した広告配信、リテールメディア、ペイドソーシャル、プログラマティック、ストリーミングなどが強く伸びています。日本では、SNS縦型動画、コネクテッドTV、マスコミ四媒体由来のデジタル広告、交通・屋外・イベントの回復も重要な要因です。

実務では、世界のトレンドをそのまま日本市場へ当てはめるのではなく、自社の顧客がどの媒体で情報収集し、どの接点で比較し、どこで購入・問い合わせに至るかを見ます。広告費推移は、予算を移すための答えではなく、仮説を作るための材料です。

日本と世界の広告費推移の比較

同じ「広告費成長」でも、伸びている領域や実務上の示唆は少し異なります。

比較項目 日本 世界 実務での示唆
市場規模 2024年 7兆6,730億円 2024年 7,724億ドル規模予測 国内施策では日本の媒体構造、海外展開では地域別成長率を見る
デジタル比率 インターネット広告費47.6% デジタル広告比率はさらに高い水準へ 検索、SNS、動画、コマース、データ活用を横断して設計する
伸びる領域 SNS縦型動画、CTV、交通・屋外、イベント リテールメディア、ペイドソーシャル、プログラマティック、AI 自社の顧客接点に近い領域から小さく検証する
注意点 推定範囲変更やイベント回復の影響を読む 予測値は発表時点で更新される 前年比だけでなく、構成比と定義を確認する

日本と世界で共通する広告費の変化

共通点はデジタル化ですが、伸びている接点の内訳は地域によって異なります。

デジタル化 共通の大潮流

検索、SNS、動画、コマース、データ活用が広告費を押し上げています。

動画化 CTV・縦型動画

日本ではテレビメディア関連動画広告やSNS動画も重要です。

購買接点化 リテールメディア

世界市場では購買データを活用した広告が伸びています。

リアル接点の回復 交通・屋外・イベント

日本では人流回復とインバウンドも広告費を支えています。

広告費推移を自社の予算配分に活かす方法

広告費推移を見たあとに大切なのは、自社の予算配分へ落とし込むことです。市場全体でインターネット広告が伸びているからといって、すぐに全予算をデジタルへ移す必要はありません。まず、自社の売上につながる接点を、認知、比較、獲得、継続に分けます。

次に、広告費を「市場の伸び」「自社の成果」「顧客行動」の3つで見ます。市場が伸びている媒体でも、自社のCVRや商談化率が低ければLPや訴求の改善が先です。逆に市場全体では大きくない媒体でも、自社の顧客に深く届くなら投資価値があります。

最後に、広告費の見直しは年1回ではなく、四半期ごとに行います。新しい媒体やフォーマットにはテスト予算を置き、既存媒体はCPA、ROAS、商談化率、受注率、LTVまで見て判断します。広告費推移のデータは、予算会議で「なぜこの媒体を増やすのか」「なぜこの媒体を減らすのか」を説明する根拠になります。

広告費推移を予算配分に使う手順

市場データをそのまま真似るのではなく、自社データと組み合わせて判断します。

手順 確認すること 判断例
1. 市場トレンドを見る 総広告費、媒体別構成比、伸びている領域 動画、SNS、CTV、OOH、リテールメディアを検証候補に入れる
2. 自社成果を見る CPA、ROAS、CVR、商談化率、受注率、LTV 市場が伸びていても、自社で成果が出ない媒体は改善仮説を立てる
3. 顧客行動を見る 検索、SNS、比較サイト、店舗、展示会、口コミ 顧客が比較する接点に予算とコンテンツを寄せる
4. テスト予算を置く 新媒体、新フォーマット、新クリエイティブ 全体予算の一部で検証し、成果が見えたら段階的に増やす

広告予算を見直すときの判断ウェイト

市場トレンドだけでなく、自社成果と顧客行動を重ねて判断します。

自社の成果 最重要

CPA、ROAS、商談化率、受注率、LTVを確認します。

顧客行動 重要

検索、SNS、比較、店舗、展示会など実際の接点を見ます。

市場トレンド 仮説材料

伸びている媒体を検証候補として扱います。

テスト余地 小さく検証

新媒体・新フォーマットは段階的に予算を置きます。

まとめ:広告費推移は媒体選定ではなく、顧客接点の変化として読む

日本と世界の広告費推移を見ると、広告市場は回復・成長を続けながら、デジタル、動画、データ活用、リアル接点との統合へ移っています。日本では2024年の総広告費が7兆6,730億円となり、インターネット広告費は47.6%まで拡大しました。世界でも2024年の広告市場は7,724億ドル規模と予測され、2025年以降も成長が見込まれています。

ただし、広告費推移は「どの媒体に出すべきか」を自動的に決めるものではありません。市場の伸び、自社の成果、顧客行動を重ねて見ることで、予算を増やす媒体、改善して残す媒体、縮小する媒体、テストする媒体が見えてきます。

実務で確認するチェックリスト

  • 日本の総広告費、媒体別広告費、前年比、構成比を分けて確認している
  • 世界広告市場の成長率とデジタル広告比率を最新予測で確認している
  • 市場全体の伸びと自社のCPA、ROAS、商談化率、受注率を混同していない
  • 広告費を認知、比較、獲得、継続の役割別に分けている
  • 新しい媒体やフォーマットには小さなテスト予算を設定している
  • 前年比だけでなく、推定範囲や定義変更の影響も確認している

よくある質問

日本の広告費は増えていますか?

電通「2024年 日本の広告費」では、日本の総広告費は7兆6,730億円、前年比104.9%となり、3年連続で過去最高を更新しました。2020年に落ち込んだ後、2021年以降は回復と成長が続いています。

日本で一番大きい広告媒体は何ですか?

2024年時点ではインターネット広告費が3兆6,517億円、構成比47.6%で最大です。マスコミ四媒体広告費は2兆3,363億円、プロモーションメディア広告費は1兆6,850億円です。

世界の広告費はどのくらい成長していますか?

dentsu Global Ad Spend Forecasts 2025では、世界の広告市場は2024年に前年比6.8%成長し、7,724億ドル規模になると予測されています。2025年も5.9%成長が見込まれています。

広告費推移を見るときの注意点は何ですか?

総額だけで判断せず、媒体別構成比、前年比、推定範囲の変更、景気やイベント要因、デジタル化の影響を分けて見ることです。特に日本の広告費では、2019年に推定対象が追加されている点にも注意が必要です。

広告費の市場データは自社の予算配分にどう使えばよいですか?

市場データは、予算配分の仮説作りに使います。市場で伸びている媒体を確認したうえで、自社のCPA、ROAS、CVR、商談化率、受注率、LTVと照らし合わせ、増額、改善、縮小、テストの判断を行います。