最初に押さえるポイント
- 2025年の総広告費は8兆623億円で前年比105.1%、4年連続で過去最高を更新した
- ネット広告費は4兆459億円となり構成比50.2%で初めて過半数を超えた
- 動画(ビデオ)広告は1兆275億円で統計開始以降初の1兆円超、前年比121.8%で全体を牽引した
- マスコミ四媒体は2兆2,980億円で前年比98.4%、テレビは横ばい、新聞は91.8%と縮小が続く
- ネット広告媒体費の88.7%は運用型で、配分の主戦場が買付方式の設計へ移ったことを示す
何が起きたか──構成比50.2%という統計史上の節目
電通は2026年3月5日、2025年の日本の広告費を発表した。総額は8兆623億円、前年比105.1%で、2021年から5年連続で伸び、4年連続の過去最高更新となった。金額そのものより、内訳の構成比に今年の節目があった。
インターネット広告費は4兆459億円、前年比110.8%で、1996年の推定開始以来初めて4兆円を超えた。総広告費に占める構成比は50.2%。ネット広告が単独で過半を占めたのは、この統計が始まって以来初めてのことである。
前年の2024年は構成比47.6%だった。1ポイント強の上昇は劇的に見えないが、母数である総広告費が拡大するなかでの過半超えは意味が重い。市場全体が伸びながら、その増分の多くをネットが吸収した結果としての50.2%だからだ。
もう一つの象徴が動画広告である。ビデオ(動画)広告は1兆275億円、前年比121.8%で、こちらも統計開始以降初めて1兆円の大台に乗った。総広告費の節目とネット内の節目が同じ年に重なった点に、2025年の特異性がある。
2025年 日本の広告費の全体像(媒体大分類)
電通「2025年 日本の広告費」より。金額は億円、前年比は%。インターネット広告費が単独で過半数を占めた。
| 媒体区分 | 金額(億円) | 前年比 | 構成比 |
|---|---|---|---|
| 総広告費 | 80,623 | 105.1% | 100.0% |
| インターネット広告費 | 40,459 | 110.8% | 50.2% |
| マスコミ四媒体広告費 | 22,980 | 98.4% | 28.5% |
| プロモーションメディア広告費 | 17,184 | 102.0% | 21.3% |
なぜ過半を超えたか──伸びた側と縮んだ側の非対称
過半超えは、ネットの急伸とマス媒体の停滞という非対称の合算で起きた。ネット広告費は前年から3,942億円増えた一方、マスコミ四媒体は2兆2,980億円、前年比98.4%とほぼ横ばいで微減にとどまった。
四媒体の中身を見ると、温度差がある。テレビメディアは1兆7,556億円で前年比99.7%とほぼ前年並み、ラジオも99.2%とおおむね横ばいだった。一方で新聞は3,136億円・前年比91.8%、雑誌は1,135億円・前年比96.3%と、紙媒体の縮小が続いた。
つまり四媒体は一括りに沈んだのではなく、放送系が踏みとどまり、紙系が落ちる二極化の構図にある。テレビが大崩れしていない点は、後述するコネクテッドTVや配信周りの動画需要とも無縁ではない。
市場全体が105.1%で伸びるなか、横ばいの媒体は相対的に構成比を落とす。ネットの増分が全体の成長を主導し、横ばいの四媒体がシェアを譲った──この単純な算術が、50.2%という数字の正体である。
マスコミ四媒体の内訳(2025年)
電通「2025年 日本の広告費」より。放送系が横ばい、紙系が縮小という二極化が読み取れる。金額は億円。
| 媒体 | 金額(億円) | 前年比 |
|---|---|---|
| テレビメディア | 17,556 | 99.7% |
| 新聞 | 3,136 | 91.8% |
| ラジオ | 1,153 | 99.2% |
| 雑誌 | 1,135 | 96.3% |
数字を読み解く──牽引役は『検索』から『動画』へ
ネット広告の中身も静的ではない。長らく成長を主導してきたのは検索連動型広告だったが、2025年は動画が前面に出た。ビデオ広告は1兆275億円・前年比121.8%と、ネット全体の伸び(110.8%)を大きく上回るペースで拡大した。
動画と並走するのがソーシャル広告である。1兆3,067億円・前年比118.7%で二桁成長を続け、ネット広告媒体費に占める構成比は39.5%に達した。内訳ではSNS系が5,508億円、動画共有系が5,126億円と、ショート動画や配信が需要の中心になっている。
取引形態の偏りも見ておきたい。入札方式で取引される運用型広告は2兆9,352億円・前年比112.5%で、ネット広告媒体費の88.7%を占めた。出稿のほぼ全量が、枠の買切りではなくオークション型の運用に移っている。
ここから見える論点は単純だ。ネットが過半を取ったことより、その過半の中身が『動画化』『ソーシャル化』『運用型化』へ同時にシフトしていること。媒体シェアの議論より、配分ロジックの設計が問われる段階に入った。
ネット広告の内側で起きた成長(2025年)
電通「2025年 日本の広告費 インターネット広告媒体費 詳細分析」より。動画とソーシャルが全体の伸びを上回った。金額は億円。
| 項目 | 金額(億円) | 前年比 | 備考 |
|---|---|---|---|
| ビデオ(動画)広告 | 10,275 | 121.8% | 初の1兆円超 |
| ソーシャル広告 | 13,067 | 118.7% | 媒体費の39.5% |
| 運用型広告 | 29,352 | 112.5% | 媒体費の88.7% |
| ネット広告費(総額) | 40,459 | 110.8% | 構成比50.2% |
もう一つの読み方──『ネット対マス』の二分法は古びている
過半超えは『ネットがマスを抜いた』という見出しで語られやすい。だが2025年のデータは、その二分法自体が実態に合わなくなっていることも示している。境界が溶けているのだ。
象徴的なのが、マスコミ四媒体由来のデジタル広告である。テレビメディア関連動画広告費は805億円・前年比123.3%と高い伸びを示した。これは放送局のコンテンツがネット配信面で消費される、いわば『テレビ由来のネット広告』にあたる。
テレビメディアが横ばいで踏みとどまった背景にも、コネクテッドTVや見逃し配信といったネット接続経由の視聴拡大がある。電波かIPかという入口の違いを越えて、映像広告という需要そのものが太くなっている。
したがって事業会社が向き合うべきは『ネットかマスか』の択一ではない。動画という共通フォーマットが媒体をまたいで広がるなかで、入口の種別ではなく到達と効果の単位で配分を考える発想への切り替えである。
実務への示唆──事業会社はこの分水嶺をどう受け止めるか
まず確認したいのは、50.2%はあくまで日本市場全体の平均値だという点である。自社の出稿構成がこの平均と乖離していること自体は問題ではない。商材・購買導線・想定顧客の年齢層により、最適なネット比率は当然ばらつく。
次に、運用型が媒体費の88.7%を占める現実は、社内体制の論点に直結する。買付がオークション型に寄るほど、媒体選定よりも入札・クリエイティブ・計測の運用品質が成果を左右する。代理店任せか内製かの線引きを点検する好機だ。
動画1兆円という数字は、クリエイティブ制作のコスト構造にも影響する。静止画バナー中心の制作体制のままでは、ショート動画やコネクテッドTV向けの需要に供給が追いつかない。制作の量産設計を前提に置く必要がある。
最後に計測である。媒体をまたいで動画が広がるほど、媒体ごとの管理画面だけでは重複到達も貢献度も見えない。Cookie規制下での計測前提も含め、横断で効果を捉える基盤の有無が、配分判断の精度を分ける。
まとめと展望──過半は通過点であって到達点ではない
2025年の日本の広告費は、総額8兆623億円・ネット構成比50.2%・動画1兆円という三つの節目が重なった年として記録される。過半超えは長く予想されてきた到達であり、驚きよりも確認に近い。
重要なのは、この50.2%が止まる地点ではなく通過する地点だという見立てである。動画・ソーシャル・運用型が二桁成長を続ける限り、構成比はさらに切り上がる蓋然性が高い。来年以降の議論は『何%か』ではなくなる。
次に問われるのは質の側だ。Cookie規制やプライバシー保護の強化が進むなかで、運用型の効率と計測の透明性をどう両立させるか。量の過半を取った市場が、次に効果の質で淘汰される局面に入る。
事業会社にとっての示唆は一貫している。媒体シェアの平均値を追うのではなく、自社の顧客がどこでどの形式の広告に触れるかを起点に、配分・制作・計測を一体で設計し直すこと。分水嶺の先にあるのは、その地道な再設計である。
実務で確認するチェックリスト
- 自社のネット広告比率を市場平均50.2%と比較し、乖離が商材特性で説明できるか確認する
- 出稿の運用型比率を把握し、入札・クリエイティブ・計測の運用品質を点検する
- 動画(ビデオ)・ソーシャル面への配分余地を、ショート動画やCTVも含めて評価する
- 静止画中心の制作体制が動画量産の需要に追従できるか、制作フローを見直す
- 媒体横断で重複到達と貢献度を捉える計測基盤の有無を確認する
- Cookie規制・プライバシー強化を前提に、計測の代替手段を準備する
- テレビ・動画など映像広告を媒体種別でなく到達・効果の単位で配分検討する
よくある質問
2025年にネット広告の構成比が初めて過半数を超えたというのは本当ですか。
はい。電通の2025年「日本の広告費」によると、インターネット広告費は4兆459億円となり、総広告費8兆623億円に占める構成比は50.2%でした。この統計が始まって以来、ネット広告が単独で過半数を占めたのは初めてです。
総広告費とインターネット広告費の正確な金額と前年比は。
総広告費は8兆623億円で前年比105.1%、4年連続で過去最高を更新しました。インターネット広告費は4兆459億円で前年比110.8%、前年より3,942億円増えて初めて4兆円を超えています。
動画広告が1兆円を超えたとは具体的にどういう数字ですか。
ビデオ(動画)広告が1兆275億円、前年比121.8%となり、統計開始以降初めて1兆円を突破しました。ネット広告全体の伸び(110.8%)を上回るペースで、市場成長を牽引した主役と言えます。
マスコミ四媒体は減ったのですか。
四媒体合計は2兆2,980億円・前年比98.4%とほぼ横ばいの微減でした。内訳ではテレビメディア(99.7%)やラジオ(99.2%)が踏みとどまる一方、新聞(91.8%)や雑誌(96.3%)は縮小が続き、放送系と紙系で二極化しています。
事業会社はこのデータをどう使えばよいですか。
50.2%は市場全体の平均値であり、自社の最適なネット比率とは別物です。運用型が媒体費の88.7%を占める現実を踏まえ、媒体シェアの追随ではなく、運用品質・動画制作体制・横断計測の整備を起点に配分を設計し直すのが実務的です。