最初に押さえるポイント
- AI概要が出る検索の1位CTRは日本で約37.8%減、グローバルで58%減(Ahrefs、2025年12月データ)
- グローバルは2025年4月の34.5%減から12月の58%減へ8カ月で拡大し、日本も追随する可能性が高い
- AI概要が表示されるキーワードの99.2%は情報収集型で、知識提供型の記事ほど影響を受けやすい
- 日本のゼロクリック率は調査により約48.8%から63.2%、10代では73.6%に達し若年層ほど高い
- 流入数が劣化指標になるなか、指名検索・直接流入・会員基盤といった非検索資産の比重が増す
何が起きたか──日本でも1位CTRが37.8%下がった
2026年2月26日、SEOツール大手のAhrefsが、Googleの「AIによる概要(AI Overviews)」が検索クリックに与える影響を日本市場について初めて数値化した。AI概要が表示される検索では、1位のクリック率が日本でも約37.8%低下したという結果である。
同社の分析では、AI概要が表示されない場合に想定される1位のクリック率が2.9%だったのに対し、実際のクリック率は1.8%にとどまった。差し引き1.1ポイント、率にして37.8%が、検索結果の最上位に立っていても失われている計算になる。順位の優位がそのまま流入に直結しなくなったことを意味する数字だ。
グローバルではこの低下幅が58%に達する。日本の約38%は相対的に小さく見えるが、後述する時系列を踏まえると「まだ小さい」段階にすぎない可能性が高い。事業会社のマーケ担当にとって、1位を取っても流入が以前ほど伸びないという実感を、外部データが裏づけた形だ。
重要なのは、これが順位の話ではなく「同じ順位でのクリックの目減り」だという点である。順位を上げる努力をしても、AI概要が利用者に答えを返してしまえばクリックは戻らない。流入数という指標そのものの土台が動いており、これまでの成功体験がそのまま通用しない局面に入りつつある。
AI概要表示時の1位クリック率の低下(Ahrefs、2025年12月データ)
AI概要が表示されない場合の想定値と、実際の値の比較。日本とグローバルの低下幅。
| 市場 | 想定CTR | 実際のCTR | 低下率 |
|---|---|---|---|
| 日本 | 2.9% | 1.8% | 約37.8%減 |
| グローバル | — | — | 約58%減 |
| グローバル(2025年4月時点) | — | — | 34.5%減 |
なぜ拡大するのか──8カ月で34.5%減から58%減へ
Ahrefsが最初にこのテーマを発表したのは2025年4月で、当時のグローバルの低下幅は34.5%だった。それが2025年12月のデータでは58%にまで広がっている。わずか8カ月で、AI概要のクリック抑制効果は約7割増しになった計算だ。一過性の現象ではなく、進行中のトレンドであることがうかがえる。
背景には、AI概要の表示範囲そのものが拡大し続けていることがある。Googleの対話型AI検索「AIモード」は提供開始から約1年で月間アクティブユーザーが10億人を超えたと、2026年のGoogle I/Oで公表された。AIが答えを返す面が、検索体験の中心に移りつつある。
もう一つの要因が、AI概要が出やすいクエリの性質である。Ahrefsによれば、AI概要が表示されるキーワードの99.2%は情報収集型だ。「やり方を知りたい」「意味を調べたい」といった、まさにオウンドメディアの解説記事が狙ってきた領域と重なる。
日本語でのAI概要はまだ表示の浸透度が相対的に低い段階にあると考えられる。だからこそ低下幅も約38%にとどまっている。だがグローバルの軌跡をなぞるなら、日本の数字も時間とともに50%台へ向かうと見るのが自然だ。今の約38%を到達点ではなく通過点として捉える視点が要る。
データの読み解き──「1位だけ」の問題ではない
AI概要の影響は1位に限らない。Ahrefsの分析では、2位で約50.8%減、10位で約19.4%減と、検索結果の上位から下位までクリック率が押し下げられている。上位ほど影響が大きく、これまで「上位を取れば安全」とされた前提が崩れている。順位を上げて影響を回避するという発想自体が効きにくくなっている。
見落としやすいのは、これがAI概要の表示される検索だけを切り出した数字である点だ。サイト全体の流入は、AI概要が出るクエリと出ないクエリの混合で決まる。情報収集型コンテンツの比率が高いメディアほど、平均流入の劣化が大きく出る構造になっており、自社の記事構成によって体感する痛みは変わってくる。
数字の出どころにも注意がいる。AhrefsはGoogle Search Consoleのデスクトップ集計を、2023年12月と2025年12月で比較している。AI概要登場前と直近の差分を見るための設計であり、季節要因や順位変動とは切り分けられた、比較的堅い推定だと評価できる。
一方で、Ahrefsはツール提供者であり、AI検索の脅威を強調する立場が皆無とは言えない点には留意がいる。ただSeerやAuthoritasなど独立した複数調査も同方向、おおむね50%前後の減を示しており、低下が起きているという方向性そのものは疑いにくい。数値の絶対水準より傾向として受け止めたい。
検索順位別に見たAI概要表示時のCTR低下(グローバル)
AI概要が表示される検索での順位別クリック率の低下幅。上位ほど影響が大きい。
| 検索順位 | CTR低下率 | 影響の傾向 |
|---|---|---|
| 1位 | 約58%減 | 最も大きい |
| 2位 | 約50.8%減 | 大きい |
| 10位 | 約19.4%減 | 相対的に小さい |
ゼロクリックの実像──調査により48.8%から63.2%
クリック率の低下を利用者側から見ると「ゼロクリック」になる。検索しても個別サイトを開かずに済ませる行動だ。CyberAgent GEO Lab.が2025年10月に実施した調査では、AI概要などで検索を完結させる人の割合が全体で63.2%に達した。
世代差が際立つ。同調査では10代が73.6%、20代が66.8%、30代が62.1%と、若いほどゼロクリック傾向が強い。検索を「答えを得る場」として使う世代が増えており、サイトへ誘導する従来の導線が世代単位で細っている。今の若年層が主要購買層になる数年後を見据えると、この差は将来予測の材料になる。
別のSeedの2025年11月調査では、ゼロクリック層を約48.8%と推計し、生成AIの利用後に「サイト訪問頻度が減った」と答えた人が30.5%いた。調査ごとに定義や対象が異なるため数字に幅はあるが、いずれも『約半数以上』という重い水準で一致している。
数字の幅は、設問が『頻繁に』までを含むか『時々』までを含むか、あるいは調査対象の年齢構成といった定義の差に由来する。だからこそ単一の数値を絶対視せず、複数調査が示すレンジで捉えるのが実務的に妥当だ。少なくとも半数前後がクリックに至らない、という認識を共通の出発点にしたい。
日本のゼロクリック関連指標(2025年後半の主な調査)
調査主体ごとに定義が異なるため数値に幅がある。いずれも半数前後以上を示す。
| 調査主体 | 指標 | 数値 | 時期 |
|---|---|---|---|
| CyberAgent GEO Lab. | 検索完結(全体) | 63.2% | 2025年10月 |
| CyberAgent GEO Lab. | 検索完結(10代) | 73.6% | 2025年10月 |
| Seed | ゼロクリック層 | 約48.8% | 2025年11月 |
| Seed | AI後にサイト訪問減 | 30.5% | 2025年11月 |
実務への示唆──流入数は劣化指標になりつつある
ここから導かれるのは、検索流入の『量』を主指標に据える運用が耐用年数を迎えつつある、という現実だ。同じ順位でクリックが目減りする以上、表示回数あたりの流入は構造的に下がる。順位やトラフィックだけを追うKPIは、努力と成果の相関を見失わせる。
代わりに比重を移すべきは、検索エンジンに依存しない資産である。指名検索、直接流入、メールやSNSの会員基盤、ブランド想起。AIが答えを代弁しても、『このメディアを読みたい』という需要は代替されにくい。守るべきは順位ではなく、想起される固有名である。
コンテンツ面では、AI概要が要約しきれない価値を持つかが分水嶺になる。一次データ、独自調査、当事者の視点、具体的な比較。要約で満足されない密度こそが、クリックを残す理由になる。逆に汎用的な用語解説の量産は、AI概要が最も得意とし、最も影響を受ける領域であることを直視する必要がある。
計測も見直しが要る。Search Consoleの表示回数とクリックの乖離、AI概要が出るクエリ群の特定、流入後の回遊や指名検索の推移。これらを束ねて、流入の『質』と『反復』を測る指標へ、ダッシュボードの軸を入れ替える局面にある。量の減少を嘆く前に、何を成果と呼ぶかを定義し直したい。
まとめと展望──守るべきは順位ではなく固有名
AI概要は、検索の最上位に立つ意味を静かに変えている。日本でも1位CTRが約37.8%減り、グローバルは58%減。8カ月で34.5%減から58%減へ広がった事実は、日本もこの曲線を追う蓋然性が高いことを示している。今ある数字を最終形と見なさず、変化の途中だと捉えることが出発点になる。
一方で、これは検索の終わりではなく、検索の役割が『誘導』から『回答』へと移る転換である。誘導が細るなら、誘導に頼らない関係をどれだけ積み上げられるかが、メディアの体力を分ける。指名で呼ばれ、直接訪れられる存在になれるか。読者との関係資産こそが、AI概要に侵食されない最後の砦になる。
事業会社のマーケ担当に求められるのは、悲観でも静観でもなく、指標と資産の冷静な組み替えである。流入数の劣化を前提に置き、独自性と反復訪問を測り、検索外の導線を厚くする。AIが答えを代弁しても、固有名そのものは奪えない。守るべきはクリックの量ではなく、想起される名前である。
実務で確認するチェックリスト
- AI概要が表示されるクエリ群を特定し、表示回数とクリックの乖離をSearch Consoleで定点観測しているか
- KPIを順位・流入量だけでなく、指名検索・直接流入・反復訪問を含む構成に見直したか
- 主要記事が一次データや独自視点を備え、AI概要の要約で代替されにくい密度を持っているか
- 汎用的な用語解説の量産に依存していないか、影響を受けやすい情報収集型コンテンツの比率を点検したか
- 会員登録・メール・SNSなど検索外の到達手段とブランド想起を強化する施策が走っているか
- 若年層ほどゼロクリック率が高い前提で、ターゲット世代ごとの流入構造を分けて分析しているか
- 複数調査の数値レンジで現状を捉え、単一の数字を絶対視していないか
よくある質問
日本の37.8%減という数字はどの調査の値ですか
SEOツール大手Ahrefsが2026年2月26日に公表した分析の値です。2025年12月のGoogle Search Console集計をもとに、AI概要が表示される検索の1位クリック率を、想定2.9%に対し実際1.8%と推計し、約37.8%の低下としています。
なぜグローバル(58%減)より日本(約38%減)の影響が小さいのですか
日本語でのAI概要の表示浸透度がまだ相対的に低い段階にあるためと考えられます。グローバルも2025年4月時点は34.5%減で、12月に58%減へ拡大しました。日本も浸透が進めば同様に低下幅が広がる可能性が高いと見られます。
ゼロクリックの割合は調査によって違いますが、どう解釈すべきですか
定義と対象の違いで数値に幅が出ます。CyberAgent調査は検索完結を全体63.2%・10代73.6%、Seed調査はゼロクリック層を約48.8%と推計しています。単一の数値ではなく、半数前後以上というレンジで捉えるのが実務的です。
オウンドメディアはまず何から見直すべきですか
流入量中心のKPIの見直しが起点です。順位や表示回数だけでなく、指名検索・直接流入・反復訪問を測る軸を加え、AI概要に要約されにくい一次データや独自視点を備えたコンテンツへ重心を移すことが有効です。